遺言の種類「特別方式」とは?危急時遺言・隔絶地遺言の2種類があります
遺言には普通方式の他に、緊急事態などの特殊な事態では、「特別方式」という方式で遺言を作成する場合があります。
特別方式には「危急時遺言」「隔絶地遺言」の2種類があります。
以下に、危急時遺言と隔絶地遺言の特徴について記していきます。
目次
危急時遺言
危急時遺言とは、遺言者に死亡の危急が迫り署名押印ができない状態の場合に口頭で遺言を残し、証人が変わりに書面化する遺言の方式です。
病気などで危急状態の人に認められる一般危急時遺言と、船や飛行機が遭難した場合に認められる船舶遭難者遺言が法律で定められています。
一般危急時遺言
一般危急時遺言とは、一般臨終遺言、死亡危急者遺言ともいいます。疾病その他で死亡の危急に迫っている場合に認められる遺言方式です。
民法で定められた一般危急時遺言の要件
①証人3人以上の立会いをもって、その1人に遺言の趣旨を口授する
②口授(口がきけない人の場合は通訳人の通訳)を受けた証人がそれを筆記する
③口授を受けた証人が筆記した内容を、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、または閲覧する
④各証人が筆記の正確なことを承認した後、遺言書に署名し印を押す
家庭裁判所による確認
一般危急時遺言による遺言の日から20日以内に、証人の1人または利害関係人から家庭裁判所に請求して、遺言の確認を得なければなりません。家庭裁判所は、遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得なければ、これを確認することができません。
一般危急時遺言の失効
遺言者が普通方式によって遺言をすることができるようになった時から6ヶ月間生存するとき、一般危急時遺言は無効となります。
船舶遭難者遺言
船舶遭難者遺言とは、難船危急時遺言ともいわれます。船舶の遭難という緊急事態を想定して定められた遺言形式です。
民法で定められた船舶遭難者遺言の要件
①証人2人以上の前で、口頭(口がきけない人の場合は通訳人の通訳)で遺言をする
②証人が遺言の趣旨を筆記して、署名印を押す。なお、遭難が止んだ後、証人が記憶に従って遺言の趣旨を筆記し、これに署名・押印しても差し支えない
家庭裁判所による確認
証人の1人または利害関係人から遅滞なく家庭裁判所に請求して確認を得なければ、船舶遭難者遺言は効力を生じません。
船舶遭難者遺言の失効
遺言者が普通方式によって遺言をすることができるようになったときから6ヶ月間生存するときは、船舶遭難者遺言は無効となります。
隔絶地遺言
隔絶地遺言とは、遺言者が一般社会との交通が断たれ、普通方式による遺言ができない場合に認められる方式です。伝染病隔離者遺言と在船者遺言が法律で定められています。
伝染病隔離者遺言
伝染病隔離者遺言とは、一般隔絶地遺言ともいわれます。名称に「伝染病」とありますが、伝染病による場合だけではありません。広く行政処分で交通を断たれた場所にいる場合にも認められた遺言方式です。
民法で定められた伝染病隔離者遺言の要件
①警察官1人及び証人1人以上の立会いが必要
②遺言書は遺言者が作成する
③遺言者、筆者、警察官及び証人が署名し、印を押す
なお、家庭裁判所の確認は不要です。
伝染病隔離者遺言の失効
遺言者が普通方式によって遺言をすることができるようになったときから6ヶ月間生存するとき、伝染病隔離者遺言は無効となります。
在船者遺言
在船者遺言とは、船舶隔絶地遺言ともいわれます。船舶の中にいる場合に認められた遺言方式です。
民法で定められた伝染病隔離者遺言の要件
①船長または事務員1人及び証人2人以上の立会いが必要
②遺言書は遺言者が作成する
③遺言者、筆者、立会人及び証人が署名し、印を押す
なお、家庭裁判所の確認は不要です。
在船者遺言の失効
遺言者が普通方式によって遺言をすることができるようになったときから6ヶ月間生存するとき、船舶隔絶地遺言は無効となります。