相続財産の中で株式の評価はどのようにするのか
相続財産のなかには、株式が含まれる場合があります。現在、日本の約250万社の会社のうち、上場している会社は3,400社程度です。ほとんどの会社は上場していない株式であり、市場で日々取引されることがなく、取引相場のない株式です。
当然、上場株式を所有している人もいますので、以下に、それぞれ評価方法について説明をしていきます。
目次
未公開株式
評価の基本
未公開株式の評価は、次の3つに分けられます。計算式は非常に難しいため、分類のみを説明していきます。
①1株当たりの類似業種比準価額
事業内容だけではなく、資産の保有状況や、営業の状態なども類似している上場会社の数値を基に計算します。
上場株式の数字をそのまま使うことはできないので、評価しようとする会社の数値(配当金額・利益金額・簿価純資産価額)との比準割合を計算し、上場株式の株価を評価する会社に合わせて修正します。
基準となる上場株式の数値は、国税庁が公表する業種別データ(株価・配当金額・利益金額・簿価純資産価額)を使います。
②1株当たりの純資産価額
直前期末の資産・負債を相続時の価額に評価替えし、純資産価額を計算します。評価益が出た場合には評価益に対する税金をマイナスします。
[相続税評価額による純資産価額(資産合計-負債合計)-評価益に対する税38%] ÷ 発行済株式数
※平成27年3月31日までに起こった相続については「評価益に対する税」は40%
③1株当たりの配当還元価額
最も簡単な評価方法であり、影響の少ない少数株主の評価に使います。計算式は以下の通りです。
(直前期末以前2年間の年平均配当額÷10%) × (資本金等の額÷50円)
※年平均配当金額が2円50銭未満のときは、2円50銭で計算します。
評価上の区分と評価方法
未公開株を評価する時は、会社の規模(簿価総資産価額・売上高・従業員数)から大会社・中会社・小会社に区分し、評価方法が決まります。
中会社・小会社は、類似業種比準価額と純資産価額を加重平均して評価しますが、中会社は、大会社に近い規模のものと小会社に近い規模のものとで、加重平均の割合が区分されています。
業種別の区分は以下の図の通りです。
卸売業
取引金額 | 総資産価額及び従業員数 | 会社区分 |
---|---|---|
80億円以上 | 20億円以上かつ50人超 | 大会社 |
50億円以上80億円未満 | 14億円以上かつ50人超 | 中会社(大) |
25億円以上50億円未満 | 7億円以上かつ30人超 | 中会社(中) |
2億円以上25億円未満 | 7,000万円以上かつ5人超 | 中会社(小) |
2億円未満 | 7,000万円未満または5人以下 | 小会社 |
小売・サービス業
取引金額 | 総資産価額及び従業員数 | 会社区分 |
---|---|---|
20億円以上 | 10億円以上かつ50人超 | 大会社 |
12億円以上20億円未満 | 7億円以上かつ50人超 | 中会社(大) |
6億円以上12億円未満 | 4億円以上かつ30人超 | 中会社(中) |
6,000万円以上6億円未満 | 4,000万円以上かつ5人超 | 中会社(小) |
6,000万円未満 | 4,000万円未満または5人以下 | 小会社 |
卸売業及び小売・サービス業以外の業種
取引金額 | 総資産価額及び従業員数 | 会社区分 |
---|---|---|
20億円以上 | 10億円以上かつ50人超 | 大会社 |
14億円以上20億円未満 | 7億円以上かつ50人超 | 中会社(大) |
7億円以上14億円未満 | 4億円以上かつ30人超 | 中会社(中) |
8,000万円以上7億円未満 | 5,000万円以上かつ5人超 | 中会社(小) |
8,000万円未満 | 5,000万円未満または5人以下 | 小会社 |
区分が判明したら、納税者の選択により、いずれか小さい金額の方で評価をします。
大会社
類似業種比準価額 もしくは 純資産価額
中会社
(大)類似業種比準価額 × 0.9 + 純資産価額 × 0.1 もしくは 純資産価額
(中)類似業種比準価額 × 0.75 + 純資産価額 × 0.25 もしくは 純資産価額
(小)類似業種比準価額 × 0.6 + 純資産価額 × 0.4 もしくは 純資産価額
小会社
純資産価額 もしくは 類似業種比準価額×0.5 +純資産価額×0.5
取引相場のない株式を受け取った人が少数株主である場合は、配当還元価額で評価します。
ただし、評価する会社の実態が、清算中であったり、開業前または休業中であったり、土地や株式を多く所有しているなど、特別な事情がある場合は上記のような評価はせず、純資産価額で評価をします。
被相続人が生前に関わった人から付き合いで何気に株式を購入していたなど、相続人の知り得ないことがあります。
このような場合、小さい企業の株式であっても、数が多い場合があります。そのため、相続のときにはすべての株式の正確な数も把握しておかなければなりません。
相続において、株式や土地などの評価をする場合は専門知識が必要であり、知識がない場合、間違った評価をしてしまいかねません。間違った評価で申告をすると、多くの相続税を払ってしまう可能性もあります。評価に関することは、専門家への相談がとても大事になっていきます。
上場株式の評価
上場株式とは、証券取引所に上場されている株式です。以下に、評価方法を説明していきます。
株式の評価方法
株式の評価の基本は、時価です。市場で毎日のように取引されている上場株式については、株価を簡単に調べることができます。
上場株式
売買価格が明確である上場株式は、原則として相続開始日の最終価格(終値)で評価をします。
しかし、株価は毎日変動します。さらに、何らかの要因で急騰したり急落することがあり、相続開始日が1日違うことによって評価額が大きく変わってしまうこともあります。これでは、課税の公平が図れません。
そのため、以下の1)~4)からもっとも安い平均価額を採用します。
1) 相続等があった日の最終価格
2) 相続等があった日の属する月の最終価格の月平均額
3) 相続等があった日の前月の最終価格の月平均額
4) 相続等があった日の前々月の最終価格の月平均額
なお、土曜日の場合は前日金曜日の終値、日曜日の場合は翌日月曜日の終値、土曜~月曜の3連休の日曜日の場合は、金曜日の終値と休み明け火曜日の終値の平均額になります。
また、外国の金融商品取引所に上場されている株式については、上記のように上場株式の評価方法で評価をします。
外貨のため、邦貨換算については原則として、納税者の取引金融機関が公表する課税時期における最終の為替相場によります。課税時期に相場がないときは、課税時期前の相場のうち、もっとも近い日の相場になります。
相続において、財産のなかに株式が含まれている場合には注意が必要であり、簡単に評価ができないものとして認識しておくことが大切です。